猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫には致死性の高いウイルス疾患が少なくないが、その一つが猫伝染性腹膜炎(FIP)である。

こんな怖い病気を引き起こす病原ウイルスをFIPウイルスという。しかしこのウイルスは、通常自然界には存在せず、猫腸コロナウイルスという病原性に乏しいウイルスが、ある時、猫の体内で突然変異したものである。

1頭飼いより多頭飼い、雑種猫より純血種猫の方が感染しやすいことが知られています

6か月から3歳の猫に多くみられ、全体的な統計によれば、1 ~ 5 %の発病率です。

【感染】

感染経路についてはまだはっきりと解明されていません。

母猫の胎盤や母乳からではなく、感染猫の排泄物や食器、グルーミング、ケンカなどから感染するようですが、猫の腸内で変化してコロナウイルスになるので、猫同士の接触による感染はないというものもあります。

感染したらどうなる?

若い猫では数日から数週間で発病がみられることもあります。ほとんどの猫は感染しても発症しませんが、何らかの要因で、一部の猫だけが発症するようです。(他の病気、栄養不良、妊娠、ケンカなどの外傷、免疫の低下など様々なストレスが影響しているのでしょう) 経過は1 ~ 1 6週間位ですが、ウェットタイプよりドライタイプの方が長いとされています。

【症状】

初期症状として、元気がない・食欲が減る・痩せてくる・発熱( 3 9度以上の慢性の発熱)などがある。腹水や胸水が溜まるウェットタイプ(滲出型)と、神経・眼・腎臓・肝臓等が冒され、体内に液体が留まらないドライタイプ(非滲出型)の2つがあり、ウェットタイプが多いようです。

ウェットタイプは、脱水や貧血などが見られ、黄疸、嘔吐や下痢や便秘を繰り返すこともあります。腹部が大きくなったり、胸水が溜まることにより呼吸困難を起こすこともあります。

ドライタイプは、腎臓や肝臓の障害、神経症状(てんかん、性格の変化、異常な行動、歩行困難、感覚麻痺、排泄の麻痺、顔面神経の麻痺など)、眼の障害がよくみられます。

中間型もみられることもあります。

【検査】

血液検査(抗体検査)でウイルスの有無を調べます。

発病は抗体の有無と関係がないようで、低い抗体価でも発病する場合もあり、高い抗体価でも発病しない場合もあるのです。しかし極端に高い抗体価の場合には、注意が必要です。

【治療】

猫伝染性腹膜炎(FIP)の根治療法はない。

症状を和らげる対処療法が主体となります。ステロイド剤と抗生物質を用いた治療や、免疫抑制剤を使用するなどですが、まだ解明されていない点が多いので、治療が難しいとされています。特に貧血と衰弱が進み、神経症状が出てくると悪いでしよう。

感染したからといってすぐに発病するわけではありませんが、体が弱っている時や他の病気にかかっている時などは、他の猫と接触しないように注意しましよう。

【予防】

ワクチンはありません。(アメリカではあるようですが、効果は確実ではないようです) 確実に予防する手段は、発病率が不確定なので難しいようです。

ウイルス自体の感染力は弱く、消毒薬(薄めた塩素系漂白剤など)が有効。

他の猫との接触に注意し、室内で育てる。食器・トイレ等も注意が必要。

ストレスをかけない。

感染の確認された猫は他の猫との接触をさける。

繰り返しますが、猫伝染性腹膜炎(FIP)は条件の悪い多頭飼いや、猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)などの感染によって、免疫力が低下した猫が発症しやすい病気である。そのため、多頭飼いの家庭ならばできるだけ快適な生活環境を確立し、万一FIV やFeLVなどに感染していても、症状が悪化しないようにすることが大切です。